南木佳士著『ダイヤモンドダスト』を読んだ。南木佳士は、映画にもなった『阿弥陀堂だより』の原作者で、現在、佐久総合病院で医師をしながら執筆活動をしている作家だ。
この作品は芥川賞受賞作で、四国の菊池寛記念館で存在を知った。
その昔、草軽電鉄(物語ではカブト虫電車と呼んでいる)の運転手をしていた寡黙な老人の生き方を、その息子の視点で描写している。親子の情、幼馴染の友情、病室で結ばれた友情が、人の生死と絡めて描かれる。
特に、ファントムのプラモデルがきっかけで結ばれた友情。もう二度とすれ違えないことを知りながら、病室という「単線の同じ駅」ですれ違う2人の敬礼のシーンには胸が詰まった。
先に退院した老人は、死に直面している友人のために水車を作ることを思い立つ。それは親子三代の共同作業になった。
老人の行動、表情を淡々とした文章を連ねることで表現される、愛する人、大切な人の役に立つこと、喜んでもらうことがなによりの生きがいだった老人の生き方。
水車と老人とダイヤモンドダストで構成されるラストシーンは荘厳だった。
4月14日、義父が肺炎で亡くなった。家族だけで見送った。鉄道模型が好きな人だった。
『イン・ザ・プール』(その236参照)が映画化されるそうだ。主演は松尾スズキ。なんだかちょっと違うと思うけど、新たな伊良部像を描くと書いてあるので、そういうことなのだろう。
確かに、看護婦まゆみちゃんは無愛想が似合うつっぱり系でスタイルが良ければそのままイメージになじむので適役はたくさんいるだろうが、こと伊良部医師となると、なかなか難しい。
伊集院光は? とマサノリに聞いてみたら、「それじゃつまらない」とのこと。まあ、当たり前すぎてもね。それに伊良部は常識を超越してなくてはいけないわけで(^^)
マサノリが出してきたのは「こぶ平(正蔵)」。お坊ちゃんだし、いいかも。でも、演技力が心配だわね。だからこういう選択に落ち着いたのかな。運動神経も、なさそうで、ある役だし。
松尾スズキ的伊良部一郎がどういう味を出すのか、それも楽しみの1つかもね。
患者役を見ると、かなり期待できそう。オダギリジョーのお話は抱腹絶倒間違いなしだろう。
ところで、今『ブリジットジョーンズの日記』が公開されている。8日に早めに行って、隣の映画館で見ればよかったのだが、見損なった。主演の女優さん、この役のためにまた太ったのね。役作りとはいえ、大変だわねぇ。
2005-04-11
正蔵(この名前まだなじめない。やっぱりこぶ平だなぁ)が伊良部だったらって考えてたら、ますます合っている気がしてきた。甲高い声、子供っぽさなどなど(^^)
でも、今それどころではないわよね。
8日はステラボール。私は参加できず、マサノリひとりの参加となった。
でも、私も後から現場に到着。隣にある映画館のティールームで終わるのを待っていた。人が流れてきてどうやら終わったらしいということで出ていったら、ちょうどマサノリの姿が…。あわてて追いかけた。そして、今日の様子をインタビュー。なんだか追っかけレポーターの気分。
レコーディングメンバーの音を生で聴くのはやはり迫力があるようだ。曲目も、メロディがかっこよく、外国の人が演奏したら映えそうなものがズラリ。テーマもあったようで、マサノリいわく「つばめつながり」。さすが鉄道ファンマサノリ。品川にちなんでかな。つばめが出てこなくても、鉄道でつながっているものもある(両方入っているのも)。
数えてみたら少なくとも5曲はあるが、『手のひらの東京タワー』も入れたら6曲?(^^)\こらこら。
『手のひらの東京タワー』は港区のご当地ソング。つながりネタよりこちらの方がしっくりくるわね(^^)
レコーディングメンバーならこれはぜひ聴きたいと思っていた『恋の苦さとため息と』も演奏されたそうだ。うれしい。
ネットでの放送が楽しみだ(でもやっぱり生で聴きたかった)。
カラーCD-Rというのがある。かわいいからちょっと使ってみているが、今日、面白い現象が発生した。
今日は、何色かあるうちの、黒いものを使った。記録面も黒いやつだ。
最初にトレイにセットしたところ、普通ならしばらくすればライティングソフトが立ち上がるはずなのに、チラッと反応があっただけで立ち上がらない。変だなと思いながら書き込みを開始しようとしたら、
「ブランクメディアか、空き容量の十分あるメディアを挿入してください」とのメッセージ。
何?? 新品だゾ!
では、ということで、別のCD-Rでやってみた。これもたまたま黒だった。やはりダメ。
三度目の正直、今度は赤。何事もなく書き込み終了。
どうも記録面の黒いメディアは制限があるらしい。パソコンメーカーのサイトに行ってみたところ、黒いメディアだからということではないが、まったく同じメッセージが出る例があった。
アップデータがあるらしいので見てみたら、私の使っているライティングソフトのバージョン用ではなかった(^^;
もしかしたら書き込み速度を落とせば使えるかもしれない。今度やってみよう。
もうだいぶ前になるが、奥田英朗の『空中ブランコ』を読んだ。
優秀な空中ブランコの飛び手が、キャッチャーが変わったことからうまく飛べなくなるという話だ。この主人公は、自分がうまく飛べてないという事実が理解できず、その新人のキャッチャーが自分に悪意があってわざと受け止めないと誤解する。それを、ハチャメチャな精神科医伊良部が、サーカス団の練習に加わって一緒に空中ブランコを体験しながら治療していく。
この症状、一見イップスという病気に見えるが、この作品の場合単にイップスということではなく、他人に対する警戒心から起こった症状として扱っている。だから、日々の人間関係でハリネズミのようになっている人にとってはかなり痛みが走る内容だ。
奥田英朗は、この作品で直木賞を受賞している。
伊良部シリーズは、神経の病気を扱いながらとってもライトで読後感がさっぱりしているのが特徴だ。というのも、この伊良部という医師が、まるで子供のように思ったまま、あるがままに行動するからだ。患者はすっかり調子が狂い、思わず心のバリアが外れてしまうのだ。看護婦もまた規格外だ。この2人に患者は毎回面食らう。この作品についてもそれは例外ではないのだが、読み終わるまでは、主人公に感情移入すればするほどつらい。
この短編集には、最後に『女流作家』という作品がある。これにはかなり力こぶを感じる。が、その分、間の作品で読者を大いに笑わせている。たとえば義父のかつらを取りたくて仕方なくなる強迫神経症とか(^^)
『女流作家』にはモデルがいるのだろうか。かなりリアルだ。あるいは自分と他の作家の例とをまぜているかもしれない。伊良部シリーズを書き出すきっかけを告白しているような作品だ。そんな中、奥山英太郎という同業者の名前が出てきて、編集者に 「あ、だめですよあの人。毎回作風変えるし、偏屈だし。」と言わせている。この「偏屈だし」には思い切り笑ってしまった(『泳いで帰れ』参照)。
伊良部シリーズには、この作品が入っている短編集のほかに、『イン・ザ・プール』という作品が入っている短編集もある。『イン・ザ・プール』では、伊良部は患者の病状に付き合ってかなり危ないこともしている。これが計算だとすれば大変な名医である。